パッチム(終音)をやたらに「ッ」で表記するのは良くないのだ。
韓国のパッチムを日本語表記する際、k、t、p、s、ch、kh、th、phの全てを「ッ」で表現する勢力が現れている。例えば、「釜山家」という店名の韓国料理屋があるのだが、このハングル表記をカタカナで表記するのに
"プサンチブ"とするのがGoogle検索で8件、
"プサンチッ"とするのが同11件、
という具合である。
手がかり(情報)が失われる。
前出のパッチムを全て「ッ」で書くことにすると、「小豆」も「畑」も「飯」もカタカナ表記すると「パッ」になってしまう。「小豆」と「畑」が共に「パッ」になるのは仕方がないとして、「飯」は「パブ」と書いた方がいいのではないのか? 「ポックムパプって何?」と聞かれれば「それは炒飯だよ」と教えてあげられるが、「ポックムパッって何?」と聞かれたらちょっと困る。情報が失われているため、もとのハングルを復活させにくいのである。まあ、ジャンルがかけ離れているものはよいが、「江原道の炭(スッ)」のパッチムはch、「江原道の森(スプ)」のパッチムはph、これを両方「江原道のスッ」と書いていたら、誤解が生じるじゃろうて。
「プサンチッ」や「ポックムパッ」と発音したところで、原音に近いとは思われない。
むしろ「プサンチブ」「ポックムパブ」と愚直に(?)発音した方が相手に理解されやすいだろう。「プサンチブ…」と言えば相手は「プサンチビヨ?」と聞き返してくることだろう。その時「それそれ!」と日本人は思うだろう。「プサンチッ…」と言ったところで恐らく「プサンチビヨ?」と聞き返してはこないだろうし、聞き返してきたとしても「チッ」と「チビヨ?」には距離感があるため、「それそれ!」と喜べない。
韓国語を勉強しなくても「パブ(飯の意)」や「チブ(家の意)」という言葉に接するうちに、「パブ」とカタカナで書かれていても「パb」と発音するようになるのではないか? 韓国語を勉強しなくても「ランジェリー・パブ」の最後の部分と「キムパプ(海苔巻き)」の最後の部分は違う発音になっていると思う。すなわち、「ランジェリー・パブ」は「〜・pabu」と発音しているのに対し、キムパブは「キムパb」気味に発音しているということである。ここで、「です、ます」の発音が実は「desu、masu」ではなく「des、mas」のようになされていたりもする、という話が想起される。
昔、チョンドヨン主演の映画で「約束」というものがあったが、このカタカナ表記が「ヤクソッ」あるいは「ヤッソッ」になるということなのだろうか。
うーむ。ここまで書いてきて思ったのだが、「家(チッ)」「飯(パッ)」式のカタカナ表記に私が否定的なのは、それが合理的でないからではなく、それが美しくなく生理的嫌悪感を与えるからなのかもしれない。
それではみなさん、さようなら。
[2007-12]