「それでですね。そのアメリカ人レスラーは試合の時に相手のレスラーを噛むんですけど、試合の前に歯をやすりで削ってみせるんですよ」
− それは記者会見で?
「いや、リングの上で。試合の前に。こうやって削るんですよ」
− ああ、それはブラッシーっていうんじゃないですか。
「ブラシじゃなくてやすりです」
− いや、ブラッシーってのはレスラーの名前ですよ。
− 大体、悪役プロレスラーは全部アメリカ人だったんですか。日本人はいませんでした?
「日本人はいなかったですね。日本のレスラーは力道山と金一が有名でしたけど、悪役じゃなかったです。金一は頭突きがとても強かったです」
− それは大木金太郎ですね。大木金太郎。でも、考えてみると失礼な話ですよねえ。アメリカ人はいつも悪役ってのは、アメリカ人に失礼じゃないですか。日本はいいんですよ、戦争やって負けたんだから。力道山がアメリカ人レスラーをやっつけてスカッとしていたんです。
「日本での試合はたくさん中継されていましたよ。70年代は日本のボクシングが強かったので、日本人のボクサーと戦う試合はチャンピオン戦でなくてもよく放送されました」
− そうそう。韓国人は日本とやるボクシングが好きですね。女の人はさすがにあまり見てないけど。
「日本でやった、アリと猪木の試合も韓国で放送されましたよ」
− そうですか? あの、猪木が寝そべっていたやつ?
「どんな風だったか忘れましたけど、みんなで真剣に見ましたよ」
家に帰ってから、昔目にした短歌が頭に浮かび、Googleで「アリ 猪木 田子の浦」を検索してみたところ、
アゴの裏に打ちに出てみれば白けるの〜
不意のゴロ寝に俺は困りつ
(元歌)
田子の浦に打ち出でて見れば白妙の
富士の高嶺に雪は降りつつ
と出てきた。(プロレスカフェ)
この歌の出典が不明とされていたが、これは、アリ猪木戦が行われた1976年の年末に週刊朝日が行った「パロディ百人一首」で入選した作品である。1977年の週刊朝日新年号に載っているはず。
[2004-08]