仁川(インチョン)市に住む50代の夫婦。夫婦で衣料品店を経営しています。聞き手は某韓国人と私。
「せっかくソウルから来てもらったんだから、家でご馳走したいんだけどさ、ウチの母親が痴呆症なんで家に客を呼べないのよ。だからこういう風に店で食事をすることになるんだ。
「いつ病気になったんですか。
「10年前からずっと。
ウチで犬を二匹飼ってるんだけどね、誰も家に入れないようにするのと、母親が外に出ていかないようにしてるわけ。
「お母さんの食事はどうしてるんですか。
「朝と夕飯は作って母親の所に持って行く。昼はこいつ(妻)も仕事をしているから、朝出る時、パンと牛乳を置いて来る。
オレは長男じゃないけどもう10年も母親の世話をしてるんだ。その点はこいつに申し訳ないと思っている。長男だったらまあいいんだけどね。
「なぜお母さんはお兄さんと一緒に住まないんですか。
「いわゆる嫁シュウトメの問題ってやつ。兄貴夫婦とは上手くいかなかった。
「母親、パーキンソン氏病でね、母親の部屋は臭いんだよ。こいつの妹がウチに来るとね、母親の部屋を開けるんだよ。そして妹はオレらが出した料理を全部食べてくれるんだ。ホント、有り難いことだよ。
「病気は治らないんですか。
「そりゃ、10年だからね。ぜーんぶの方法を試してみたさ。でもどれも駄目だった。
オレは母親の世話が出来て嬉しいと思っている。オレらだって、いつ痴呆症になるかもしれないわけだしね。
仕事の帰りにビンデットクを買って帰ってそれで一杯やったり、生ビールを途中でひっかけて帰ることもある。こんな風に楽しく生きているよ。
「アイゴ、いいことをしていますね。祝福を受けることをしています。
さて、このお母さんの話しはいいとして、特筆すべきこと。
それは、この店のあんこう鍋がとんでもなく美味しかったということです。もう、ふぐちりとか世の中に必要ないんじゃないかと思えるぐらいでした。奥さんの話しによると、「冷凍の鮟鱇は避けるべし。私たちはいつもこの店で食べている」とのことでした。
5月でこの味ということは、冬の鮟鱇は一体どんな味になっちゃってるのか…。
[2003-05]