「埴生の宿」という歌がありますが、韓国ではこの歌のタイトルは「埴生の宿」ではありません。「クリウン・ナエチプ(懐かしき我が家)」と言います。
また、「メリーさんの羊」という歌ですが、これはなぜか「飛行機」というタイトルです。「♪メーリさんの羊」の部分を「♪トッタトッタ、ピヘンギ(♪飛んだ飛んだ、飛行機)」のように歌う。
アメリカ人に「この歌のタイトルを知ってるか」と聞かれた時、私は「Mary's Sheepですか?」と答え、正解はSheepではなくLambだった(Mary Had A Little Lamb)のですが、ま、ネアピン賞であったわけですね。ところが韓国人の場合、自信をもって「♪トッタトッタ、ピヘンギ」と歌っているので、アメリカ人は「Oh! ナゼ飛行機ガ出テ来ルノ?」と口アングリするしかない。
* * *
数年前、北朝鮮が攻めてくるかもしれないという噂が流れて、江南地区の人たちがインスタントラーメンや携帯ガスボンベの買いだめに走ったことがあったのですが、その時期に前後して、在韓日本大使館からだったか日本人会からだったか、「有事の際の連絡網」というのが自宅に送られて来ました。
「ふんふん」と思って見てみると、その図は大使館を頂点としたピラミッド型のようになっていて、大使館に連絡が入ったら大使館から数人のナントカ委員(?)のところに連絡が行き、その後この委員がそれぞれ数人の班長のような人に連絡して、班長が私の家に連絡するように描かれていました。ま、カースト制度のバラモン・クシャトリア・ヴァイシャ・スードラで言うと、私はスードラの位置であったわけですね。ヴァイシャの人から一度確認の電話がかかって来ました。「あ、杉山さんですか。班長の○○です。確認の電話をしてみました」てな感じで。
で、スードラは誰にも連絡をする義務はないし、知らないうちにスードラにされていたのはいいんですけど、「この連絡網って必要な時に機能するのかよ」と思ってしまったことでした。
この連絡網、班長が不在もしくは連絡がとれない時は別の班長が代わりにスードラへの連絡業務を行う、というような予備連絡系統についても説明されていましたが、伝言ゲームが末端まできちんと届くくらいであれば大した問題は起きていないのだろうし、社会が本当にパニック状態になっている時には末端まで連絡が来るとは思えない。
もっとも、当時の某スードラ仲間は「カンボジアに行くべき邦人救出機がタイまでしか行けなかったことを見ても、日本から来る飛行機をあてにしていいはずがない。アメリカの飛行機に乗せてもらうことを考えた方が利口である」と言って英会話を勉強していましたから、連絡網の存在自体がそもそもどうでもよいことなのかもしれません。
それに第一、私がイメージしているのは次のような光景です。
バラバラバラと、プロペラ機の音。
「水島上等兵、早く乗って下さい!」「水島上等兵!」
水島上等兵は機上の日本人を見上げたまま動かない。
「水島、どうしたんだ! 日本に帰らないのか!?」
水島上等兵は、かすかに微笑を浮かべた後、皆に背を向けて智異山に向かって歩き始める。その肩にはオリンパスのデジタルカメラが下がっている。
「水島!」「水島上等兵〜!」
♪はにゅーうのー、やどーも、わがーぁ、やーどー。
機内の日本人の間で歌声が起きる。まるで歌声喫茶。
♪たまーの、よそおーい、うらーぁ、やーまーじー。
水島上等兵、振り向いて、
「みんな、日本に帰ったらホームページ見てくれよ! 最近アクセス数が伸び悩んでいるんだよぉ!」
「水島ぁ〜!」「コンテンツを充実させろよ〜!」「更新すればいいってもんじゃないぞぉ!」
グオーン。飛行機が飛び立つ。飛行機を仰ぎ見る水島上等兵。
おんおんおん。
ここまで書いてきて、水島上等兵を単なるスードラ扱いするのは何かが違うと思うようになりました。水島上等兵、カッコ良すぎる。
ただ、このイメージ映像、気がかりなことが一つあります。
日本人を乗せた飛行機が去って行く時、周りにいた韓国人が「メリーさんの羊」のメロディーで「♪トッタトッタ、ピヘンギ」と合唱を始めたら、突然イヤンな光景になってしまう。雰囲気ぶちこわし。このあたり、智異山ではなく韓国人の人口密度が低い山を目指すなどの修正が必要なのかもしれません。
[2001-09]