先日、地下鉄2号線の中で「噂の真相」を読んでいて何時の間にかうとうとしてしまったのだけれど、目がさめた時に隣の席に座っていた70歳くらいのおじいさんが「日本語読むの速いですね」と声をかけてきて、「かと言って日本人ではなさそうだし…」と言葉を続けた後、やや間をおいてから「先生ニム、ひとつお伺いしましょう」と言うので「ナンですか」と問うたところ、「ワカとハイクの違いは何ですか」という、「噂の真相」からは相当に距離がある質問であったわけで、「ワカは五七五七七、ハイクは五七五です」と答えたら、「ワカは…なに? 五七、五七七。ハイクは五七五? そうかー」と、一応ここでやりとりは終了し、「これって、韓国人が結構好きな質問なんだよね」と思いつつまた雑誌を読み始めようとした時、おじいさんが指を折りながら「や・せ・が・え・る、ま・け・る・な・い・っ・さ、こ・こ・に・あ・り」と始めて、普通の日本人だったら「え? そんな俳句を知ってるなんて凄いですねえ」と日韓友好てんこ盛りの甘口の合いの手を入れるところなのかも知れないけれど、ボクはこのおじいさんがちょっとアブナイ人に思えたのと次はどの俳人のどの句を言うか聞きたいと思ったことから、敢えて放っておいたわけさ。
で、この後。
この後、このおじいさんは、「あ・ま・の・は・ら」と指を折りながら言った後、また間があいて、なんとそれでおじいさんのパフォーマンスは終わってしまったわけなんだけれど、この間があいている時なぜボクが助け舟を出さなかったのかというと、おじいさんをやばい人だと思ってたという理由、おじいさんにおちょくられているのかも知れないと危惧したという理由の他に、「あまのはら」を「あさぼらけ」と勘違いして六字きまりの歌だと思い次の音を聞くまでじっとしていた、ということが決定的な理由としてあった。
結局、「あまのはら」という五音節を背にしてボクは電車を降りることになったんだけど、うん、およそ韓国に来る人は教科書問題についての想定問答集を読みこんで来ることよりも「むすめふさほせ」なんかをしっかりめに復習して来るってことがはるかに意味ある行為だったりするんじゃないのかな、というのがボクの言いたいことで、でもこの主張はいくら「微ニ入ルソウル」でも無理があるよね?
[2001-08]