パンソリというのは、例えば映画「西便制」のテーマになっていたものですね。鼓手がいて、物語を唱で綴っていくというもの。
日本人の中にも「パンソリ」を勉強してみたいという人がいるかもしれませんが、きっぱり「やめた方がよい」と言っておきましょう。
私がソウルで一番最初に住んだ家の隣りに芸術大学でパンソリを専門にしている先生がいて、某月某日、私はその先生の家の門をたたいて、「パンソリを習いたい」と言ったのでした。
とりあえず、上がってお茶を飲むことになったのですが、この先生、へんな先生で、「デパートでビデオテープを買う時、定価通りの金を渡す必要はない。持っているだけの金を置いて帰ってくればよい」などと教えてくれました。
まあ、それはともかく、この時の話しで、「パンソリは難しいから最初に短歌を勉強した方がよい」「私の弟子に習えばよい」ということになりました。
最初の日は先生じきじきの講義による国楽精神論のようなもの?(よくわからず。当時は韓国語がプアーだったのと、講義聞きながら半分寝ていた。) これは2時間ぐらいで5万ウォンでした。
二日目からはいよいよ、実習です。先生はパンソリ専攻の女子大生。
先生がスコトンスコトン太鼓を打ちながら唱うのを聞いて、その後、同じようにやってみる、というのが授業内容です。これは1回2時間で1万ウォンでした。隣りの家で出来るのがよかった。
ただ、この短歌、決して簡単なものではありませんでした。楽譜はあるのですが、この種のものは先生から弟子に口伝えされるもので、リズムも音階も楽譜と相当にずれており、楽譜は見ない方がいい位です。当時、延世大学の語学堂では毎日韓国語の例文を覚えていくという宿題があったのですが、短歌を覚えていく宿題に比べるととんでもなく楽チンなものでした。普通の言葉じゃない歌詞に普通の音程じゃないメロディーがついたものを覚えるのは大変です。
先生にもよく怒られました。「違うでしょ!」とか言われて。
先生に「違うでしょ!」と言われた場合、「違うのはわかってるんだけどうまく出来ない」のと、「どう違うのかわからない」という二つのケースがあると思うんですが、後者のケースも多かったのかな、うん。
この先生、目がすうーっと一重で、ヘアスタイルもなかなか国楽科していました。今思い出してみるに、かなり雰囲気出ていました。
ある日、お茶を飲んでいる時の話しで、私がソウルに来てから3ヶ月しか経っていないことを知って、その時から先生は少し優しくなりました。私も小中学校では音楽がずっと5だった人間で、音楽の先生にいじめられる理由はそうそうないはずですよねえ。
映画「西便制」は、一般的には高く評価された映画だと思うのですが、私としては「面白いところもあるが、退屈な部分が多い」と感じました。
短歌についても、稽古は何度も何度も繰り返しで、客観的に考えるとボーリングこの上ないと思います。
この短歌、3〜4ヶ月ほど練習したのですが、良かったことは何でしょう。太鼓を使って十二拍子で音が刻めるようになったこと? 唱っている時の生の充実感のようなものは確かにあるんですけどね。
パンソリのプロになろうとする人は喉から血が出るまで練習するとか、美しい声を出すために大便を食べる、などと聞きました。パンソリを習いたい人は、うんちを食べる覚悟が出来ているかをまず確かめた方がよろしいです。
[2001-01]