日本人のSさんと話をしていた時、「韓国では病院の患者に対しても『アンニョンハセヨ』と挨拶するのかどうか」というハナシになりました。
まず、基本的なおさらいをしましょう。アンニョンは漢字で書くと「安寧」です。誰かに会った時の挨拶は、「安寧ハセヨ」、ちょっと格式ばった言い方だと「安寧ハシムニカ」です。別れる時の挨拶は、去る人には「安寧ヒ ガセヨ(安寧で行きなさい)」、その場に留まる人には「安寧ヒ ゲセヨ(安寧でいなさい)」です。
もちろん、挨拶の表現は様々だし、挨拶が省略されていきなり本題に入る場合もあります。「あれ〜、しばらくでした」「アイゴ! ハンサムな人がいるぞと思ったら金部長じゃないですか!」などなど。別れる時も、「では失礼します」もあるし、「お疲れさまでした」もある。電話だと、「では切ります」もある。
病院関係での「アンニョン(安寧)」の使われ方を考えてみましょう。まず、私が病院に送ったFAXの概要を見て下さい。
to:○○○病院長
中間報告書
アンニョンハシムニカ。
麻浦区日本人患者代表、杉山です。
こんど頂いた薬を先週の金曜日から飲み始めたところ、腹痛はほとんどなくなりました。夜8〜9時頃に腹が張り始めることもなくなりました。
便秘はまだ続いています。
以上、ご報告いたします。
ま、アバウトこんな内容のFAXを送ったわけですね。言うまでもなく、このFAXのウリは「麻浦区日本人患者代表」というフレーズにある。何しろ「代表」ですから、相手も反応せざるを得ない。そして、返事はEメールで来た。(この病院、診察室の先生の前にはコンピュータがあって、先生はコンピュータを操作しながら患者と話しをするシステムになっています。) このメールを直訳気味に見てみると、次のような感じ。
アンニョンハセヨ
薬をお飲みになってよくなったとのこと、何よりです。
何日間か更に飲めば好転すると思われます。
野菜や果物を沢山食べれば便秘もよくなるはずです。
いつも健康であるよう願います。○○○拝上
こうして見ると、アンニョンハセヨは「お元気ですか」ではなく、「安寧」の意味を失いかけた単なる挨拶に過ぎないと言えそうです。実際、病院の椅子で順番待ちしている時に、病院の人に「アンニョンハセヨ」と挨拶されたこともあるし、病院を出るとき「アンニョンヒ ガセヨ」と言われたこともある。
でも、病気でほとんど死にかけている人と別れる時に、「アンニョンヒ ゲセヨ」と言えるかどうかはわからない。普通なら、「じゃ、行くからね」とか「また連絡するから」などが別れの言葉になるんじゃないでしょうか。
それから、「アンニョンハショッソヨ?(安寧でしたか?)」は、挨拶なんだけれども質問(答えを期待している)だとも思う。「アンニョンハショッソヨ?」に対しては、「アンニョン モッテッソヨ」(安寧でいられなかった)、「ネガ アンニョンハゲ センギョッソ!?」(俺が安寧の状況か!?)などのリターンが可能です。
「こんにちは」と言われたら、「こんにちは」と言うしかないけれど、「元気ぃ?」と言われたら、「元気じゃないよ〜」も可能だし、「俺が元気な訳ないじゃん」も可能だし、とか、ま、要するにそういうことでしょうか。
韓国人の場合、「こんにちは」は中国語では「ニイハオマ」だと思ったりしているようです。例えば、中国の選手団が韓国にやって来た時の新聞の見出しが「ニイハオマ!」だったりする。
私の認識によれば、「ニイハオ」が挨拶言葉で、「ニイハオマ」は「お元気ですか?」という質問です。
うーむ。そう言えば、日本人Sさんは「中国語の一声はドレミのレの高さである」とか言ってたんだけど、あの問題はどうなったんだろ。「中国語の一声の高さは<ラ>である」という私の持論は安泰なのだろうか。
* * *
問題: このトピックで筆者が最も言いたかったことは何か。次の中から選びなさい。
[2000-11]
【追記】<日本人Sさんは「中国語の一声はドレミのレの高さである」とか言ってたんだけど>の部分につき、日本人Sさんよりメールがあり、<ドレミの「ミ」の音程だと言ったはず>ということでした。Sさんの発言内容は私が間違って記憶していたようです。[2000-11]