東京には下宿はほとんどないと思いますが、ソウルにはまだたくさんあります。(特に大学の周辺)
下宿に住むのは、まず地方から出てきた学生。それから独身の会社員など。ごくまれに、地方から長期出張にソウルに来ているおじさんもいます。出張期間が、ホテルに泊まるには長すぎ、アパートを借りるには短かすぎる場合です。
日本人留学生も、まずほとんどは下宿に入ります。アパートでは洗濯機や冷蔵庫を買わなければいけないので、しばらく下宿で暮らしてから一人で住むことになります。もちろん、下宿に入る理由の一つに「言葉を覚えるため」があります。学校の授業だけでは、日常生活で使う言葉を覚えるのに限界があります。
日本の企業から韓国に派遣されて来る人は二つに大別できます。まず、年がけっこういっている人で、アパートに単身もしくは家族と一緒に住む人。学校には通わないので、当然ながら韓国語はほとんど上達しません。周りに日本語が上手な韓国人がたくさんいますから、さほど不便はない。ビジネスで韓国語を使うとなると、相当に突っ込んだ話ができないと意味ないわけで、「いっそ、英語で通した方がいい」と言う人も多いかと思います。私が知っている人で、1年間韓国の会社で働いていながら、「〜する前に」という表現が出来ない人がいました。びっくりを通り越して感動してしまいました。ビジネス以外では、ルームサロンなんかで使う韓国語かな? うーん。ホントはこっちの方が難しいんですけどね。エッチめのジョークとか仕込んどかなきゃいけないし。
もう一つの派遣のパターンは、若い人で語学研修させられる人。会社の指定で下宿に住まなければなりません。でも、語学学校で毎日4時間勉強して、なおかつ個人レッスンもつけて、それでも上手にならない会社員もいました。若いのに。下宿の韓国人が「どうして韓国語が話せないんだ」と質問してました。韓国人は平気で訊くからなぁ。個人の適性も考えず派遣した会社にも問題あり、ですね。
理想的な留学生活は、毎日午前は学校に行って、午後は仕事で品物の買い付けやサンプルの確認、夜下宿で食事した後、韓国人の友人と飲みに行く。家に帰ってから宿題。と、まあ、こんな感じでしょうか。金曜、土曜も、外泊はよくないですね。おばさんがしつこく訊いたりするから。
下宿代の相場。高いところは賄い付きで50万ウォン以上します。お金がない人は相部屋で生活する。半分強の値段になります。
よい下宿。よい下宿では家に帰ると部屋の灰皿が洗ってある。夕食は焼酎の晩酌付き。おじさんとよもやま話。部屋に子供が動物図鑑を持って乱入して来るので、動物の名前をイヤと言うほど覚えてしまう。勉強しているとおばさんがジュースを持ってきてくれる。そのついでに、私たち二人はなぜ結婚したか、それはダンナがしつこかったからだ、私が好きな人は別にいたんだけど、その人はアメリカに行ってしまった、などと延々話をして行く。楽しそうでしょ?
よくない下宿。大家さんが別にいて、雇いのおばさんに全部させている。おかずがよくない。キムチを含めて三品とか。洗濯はしてくれるが、他の下宿生のものとごっちゃになってしまう。
私がソウルに来る前に、ものの本を読んだところ、「おじさんがいる家は経済的に余裕があるので、おかずが良い」と書いてありました。「なるほどガッテン!」と思ってソウルに来て、下見に行った2軒めの家はおじさんがいる家だったのでここにしたのですが…。
私が引っ越して行った日におじさんが脳溢血かなんかで急死してしまいました。田舎が全羅道の人だったので、その家の家族は田舎に行ってしまい、二、三日間、他の下宿生と、キムチと目玉焼きだけで食事しました。いやあ、言葉も通じないし、何が何だかわからない世界でした。
もっとも、この話を韓国人にすると、「普通は隣りの家の人に頼んで行くと思うがなあ」なんて反応でした。要は人による、ということでしょうか。
でも、この家のおばさんも悪い人じゃなかったです。最初の1ヶ月間は、夕食のテーブルの上にある食べ物の名前を全部ノートに書いてくれました。それから、料理が上手だった。
さて、大分前にある日本人から、「定年退職するのだが、定年後は韓国に来て韓国語を勉強したい」という相談をうけました。「ついては、下宿がいいのか、部屋を借りて住むのがいいのか」と。
実は、60歳前後で韓国や中国に移るというのは、よくあるパターンです。大陸への夢捨て難し。関東軍許すまじ。
…。そうですね。本当に勉強するつもりなら、やはり一人暮らしはよくない。最初は電話連絡もろくに出来ないんですから。
下宿生が3人以下のところ。下宿屋というより、部屋が余っているので道楽で下宿生を置いているような家。大学からちょっと離れた住宅街。こんなところを探せばいいと思います。大学に通っているような下宿生とはどうせ話があわない(双方つらいものがある)ので、にぎやかすぎるところは避けた方がよろしいかと思う次第です。
下宿は一応の生活拠点にしておいて、あと、同じ年代・同じ趣味の人をつかまえるのがいいでしょうね。
[1999-10]