「461便飛行機は3番ゲートから出発いたします。ニューヨークに行かれるお客様は3番ゲートにお越し下さい」
飛行機のチケットを持って並んでいる間、心臓のドキドキする音が聞こえるようだった。アメリカに行くという事実が私には過分のものに思われた。この興奮の後には必ず何かが起きるという不安も感じた。もし、私が今こうして立っていること自体が間違っていることなら? この全てのことが一つの大きな過ちに過ぎないなら? 私は家族にどう言おう? 友達には? いや、これは決して過ちではない。アメリカに行くか、死んでしまうか、二つに一つだ。何も、いかなる事も、私の行く道を遮ることはできない…。
「チケットお見せ頂けますか? 荷物はこれで全部でしょうか?」
「ええ」
顔が火照った。実はその時まで私はみっともない荷物については全く気を遣っていなかった。この荷物は私の全財産であったが、周りの人たちの荷物と比べると、実に貧しいものに見えた。
ひょっとして忘れたものがないか、抜かしたものはないか、ずっと確かめながら私は先を行く人たちの後についた。みんなは入り口のようになっている所を通過していた。ところが、奇妙なことに、その入り口は周りに壁もなく、また開閉するドアもなかった。何かを検査する所のようであった。
「カバンはベルトコンベアの上に置いて下さい」
痩せた髭の男が言った。
私は言われた通りカバンを載せ、ゲートに入った。その時、<ピーッ>と音が鳴った。私はその場で跳びはねた。「あれ、何か間違いでも?」 その検査機の入り口からもう一度出てくる時、指がぶるぶると震えた。
「ひょっとして、ポケットにコインか何か入ってませんか?」
男が言った。
「ええ、入ってます」
「それを出してから行って下さい。さあ、ここに出してから」
私はポケットから硬貨を出し、男が差し出した小さな盆に載せた。
‥‥
■ ソ・ジンギュ
1948年慶尚南道生まれ。1971年、家政婦をするため単独で渡米。結婚の翌年(1976年)、米陸軍に入隊。現在、ハーバード大学大学院で博士学位論文を準備中。