朝目覚めて一番最初にする事は、カーテンを捲って、半地下の窓から日の光を入れること。私が薄いパジャマに裸足で窓枠によりかかって身体を一度ぶるっと震わせたら、当然あなたは寒いからだと思うでしょ? それから、車の音も聞こえない寂寞とした時刻に、一人日の光の下に座って食パンを焼く時。トーストにゆっくりゆっくりピーナッツバターを塗り重ねている途中、急にテーブルのガラスの上にバターナイフを投げ出しすっくと立ち上がる私の姿を見たら、あなたは私が寂しいからだと思うかもしれない。でもそれは違う。そんな時、大急ぎで寝室に入って何をするか知ってる? お母さんが使っていた鏡台の二番目の引き出しを開け、大袈裟な仕種で耳掻きを取り出すの。口の中にたまった唾を飲み込みながら、耳の中をほじり出し、そうしている間もくすぐったさに耐えられず、半開きの目をぱちくりさせ、ずっとくすくす笑っている私を想像してみてよ。一体どうやって、あなたの笑い声が私の身体の中に入って来て、ここを動き回っているんだろう。
他の恋人たちと同じように、私たちも一緒に映画館に行ったことがあったよね。あなたは映画館の中では眼鏡をかけた。指定番号の座席に座るとすぐ、ポケットからメガネのケースを出し、私はそれを奪うようにして取り、膝の上に載せ、レンズに触らないように注意しながら眼鏡をとり出したじゃない。まるで、あなたの服の奥深くに手を入れて心臓を取り出すかのように。あなたの眼鏡を掌に載せ、レンズを拭いているのが幸せだった。そんな私を暗闇の中で何も言わず見つめているあなたの顔、大型スクリーンの光が反射し、稲妻が閃く日のように瞬間瞬間表情が変わるのも気分が良かった。
それ以外に私が好きだったもの? それは両側に八個づつ穴が開いていたあなたの茶色の靴。つるつるの紐だったからなのか、よく結び目がほどけた。
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■ ウン・ヒギョン(殷熙耕)
1959年全羅北道生まれ。淑明女子大国文科、延世大学大学院卒。1997年東西文学賞、1998年李箱文学賞。